一つのことをずっと追及していくと、いろんな気付きがある、ということもその面白さの一つです。私自身、仙腸関節の研究から気付かされたことはたくさんありますし、これまでに多くのこと学んできました。例えば次のようなこと。
よく「関節の安定性を高める」といったことを聞くかと思います。関節が不安定だと支持性が低下してしまい、様々な問題が生じる、などと。
確かにそうした一面はあります。特に仙腸関節は関節を直接支持している筋肉の存在が認められませんから、組織の伸長や損傷などで関節が不安定になってしまうのは大問題です。
じゃあ、がっちりと固定してしまえばいいのかというと、それも少し違うようです。
仙腸関節に歪みのない状態というのは、左右の腸骨に挟まれる仙骨が、傾きも捻じれもないニュートラルな状態にあるということです。そして仙腸関節の重要な機能は、このニュートラルな状態から、左右の加重配分や下肢の筋力伝達の状況に応じて柔軟に対応することにあります。仙骨がわずかに動くことで、力の配分に対応しているのです。
ですから、がっちりと固定されてしまうと、その対応は困難なものになります。
車に例えて言うなら、これはマニュアル車のシフトのようなもので、ギアがニュートラルの時にはそこからどのギヤに入れることも自由にできますが、シフトがニュートラルの位置でがっちりと固定されていては、車は動かせません。
シフトがニュートラルの位置にあるときには、自由でなければいけないのです。
仙腸関節にも同じことが言えます。
実際に、構造的な面から見ると、仙骨がニュートラルの位置にあるとき(中間位)、仙骨を安定せる要素は見当たりません。つまり、非常に不安定なのです。
少し長くなりそうなので、続きは次回。
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