施術前の状態把握や分析、施術後の効果の判定に筋力テストを用いる施術者は多いものですが、ぼくは使いません。
筋力テストについては一通り学びはしたものの、より熱心に学ぼうとか身に付けようとかいう気持ちにはなれなかったのです。
そういった検査法そのものに対する信頼性にも疑問があり、(計測機器を用いた筋力測定ではなく)術者の主観や思い込みにも左右されやすい筋力テストを用いて判断している自分というものをあまり信用できなかったということもありますし、その他ごまかそうと思えばごまかせるだとか、それなんか怪しいなぁと思えるような施術者を見てきたりだとかで、筋力テストに対するイメージはあまりいいものではなかったのです。
また幸いにも、判断を筋力テストに頼らざるを得ない状況というのもありませんでした。
そんな、どちらかというといい印象のない筋力テストなのですが、最近あることをきっかけに、少し見直してみるかという気になっています。
そのきっかけとは、先日無意識に思いきり「伸び」をした後に、筋肉が緩んで身体が軽くなったのを実感してからです。
伸びというのはストレッチだという考えもありますが、そのとき感じたのはストレッチではなく、上半身に思いきり力を入れて一気に脱力させるという感覚でした。
確かに伸ばされる部分はありますが、それは二次的で、やはり筋収縮がメインの動作だと感じたのです。
そしてその後収縮させた筋が緩んだ、のだと。
まあ誰でも経験していることだと思うので、この辺りの感覚は分かるでしょう。
考えてみれば、こうした等尺性収縮後に起こる筋弛緩は γ、α運動ニューロンの活動抑制によってもたらされる現象として広く知られた理論で、それを利用した治療法もすでに多数あるわけです(MET、PIR、PNFなど)。
理屈としては知っていたつもりですが、今回伸びをした時に、これも同じ現象であることにたまたま「気付いた」ということです。
そして、「もしかすると、筋力テストも同じことなのでは?」と感じたのです。
で、「そうすると、筋力テストとは、実はテストではないのではないか?」との考えに行きついたのです。
もっと言えば、ピラティスにしろ低周波治療器にしろ、METやPNF同様、等尺性収縮後筋弛緩という作用機序が関わっているとすれば、根ざす原理は基本的なところで一緒なのではないか、と思うのです。
もしそうであるならば、その原理にさえ逆らわなければ、そしてその生理学的な機序を最大限活用できるならば、どのような手法を用いても結果は同じになるはずだ、と。
つまり筋力テストはその目的とは別のところで、事実上同様の役割を果たしてしまっているのではないかと考えてみたのです。
これは検査ではなく、(検査も兼ねた)治療なのではないかと・・・。
筋力テストはカイロ界では一般的な検査法であり、独自の分析法として定着しているという実績もあるので、こうした分野を深く掘り下げながらまとめ上げることは、我々の業界にとってもプラスになることでしょう。
カイロをはじめとした徒手療法は日本の医療の中では異端であって、実際には枠組みの外ですから、既存の医療サービスの領域を侵害しないということが今後(もしあるなら)の地位の確立や良好な関係性を構築するための最低限のマナーでもあると思っているので、どの領域にも属さないこうした手法には大きな魅力を感じます。
論理構築も現状の生理学的な理論で十分(ある程度か?)できそうな感じですし。
ま、とりあえずは、いま用いている手法に組み合わせながら活用してみるところから始めてみようと思っています。
何はともあれ効果がなければ意味はないんだしね。
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