学術大会後記その6

ワークショップの興奮も冷めやらぬうちに、プログラムは進みます。本当に充実した内容です(自画自賛)。

次はパネルディスカッション。テーマは「臨床の落とし穴」。

これは昨年の8月に独立行政法人国民生活センターから発表された「手技による医業類似行為の危害 ―整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症例も―」という報告書をうけ、「学会としてもなんらかの対策を」と、今回禁忌症関連の内容を盛り込もうと企画されたものです。

パネラーは大場弘先生、馬場信年先生、守屋徹先生(50音順)、の3氏。座長は荒木寛志先生という豪華な顔ぶれ。このそうそうたるメンバーを見ただけで、面白くないわけがないと確信できます。

しかし、これが今大会最大の大失敗!!

面白くなかった・・・なんてことはもちろんなくて、面白すぎました! で、何が失敗かというと、時間が足りなかったのです。私の見通しが甘かったのです。

内容は素晴らしいもので(これはすべて荒木先生のコーディネートによるものですが)、それだけに、もう少し時間を確保しておけばよかったと後で猛省いたしました。それくらいじっくりと時間をかけて行うべき企画でした。

このパネルディスカッションはケース・カンファレンス・レポート(CCR)というものだそうです。参加者に段階的に与えられる限定された情報から、患者さんに潜む問題を参加者全員で推理していく、という手法です。

このCCRは

①オープニング・ステイトメント 必要最小限の情報→疑われるレッドフラッグ(禁忌症)→除外すべき疾患

②必須7項目 除外すべき疾患

③現病歴、既往歴 必要と思われる検査、除外すべき疾患

④問診、所見(検査) 除外すべき疾患、最終的見立て—

⑤最終的見たてと施療結果の報告

という流れで進みます。

今回紹介された症例は、3例とも稀なものですが、これらがいつ、我々の施術室に患者として来られるかは誰にもわかりません。だから常にその準備が必要なのです。

パネラーの3氏は業界きっての知識人ですので、それぞれの症例に関する解説は、どれも非常にためになるものばかりでした。

惜しむらくはその時間。荒木先生にはお忙しい中大量の貴重なスライドをご用意いただいたのに、じっくり拝見できずに申し訳ないことをしてしまいました。それにしても、荒木先生は名座長ですね。あの状況で、あの3氏を相手に、あの場を盛り上げられるのは、荒木先生をおいて他にはいないでしょう。

荒木先生、馬場先生、守屋先生らが所属される九州カイロプラクティック同友会では、以前からこのCCRが教育に取り入れられていて、会員の医療従事者としての質の向上に大変役立っているそうです。実際にその内容を拝見して、それも納得。こうしたカンファレンス形式のトレーニングを、どの協会でも取り入れるべきです!

今回のようなレベルでケースカンファレンスができるのが当たり前、と言えるような業界人であり、そうしたことができる組織、協会でなければ生き残れないという業界でなければダメなんです。実際に今回壇上に上がっておられた先生方にとっては、あれが当然のことなのです。

我々徒手療法家は、徒手空拳で患者さんに対峙しなければなりません。そのために必要なのは、技術もさることながら、豊富な医学的知識です。まず確保しなければならないのは、患者さんの安全です。

こうして参加者が考える、という講演はいいものですね。そして大事です。ただのテクニカルな講義より何倍も。

荒木先生のブログに、CCRについて詳しく書かれていますので、参考にしてください。

フィニッシュカイロプラクティック研究所のブログ

そして今回のパネルディスカッションで行われたCCRの内容を詳しく知りたい、という方がおられましたら、来年に発行される学会誌に掲載されますので、それをお待ちください。学会に入会すると送られてきますので

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